五行歌 蒲生野を行く
「ここには、草木のそよぎに、空を吹き渡る風に、土の一塊にさえ 万葉の歴史が埋まっている」
もう20年は経つでしょうか、桜井市大神神社近くの菓子店の仕事をした時に出会った言葉です。今ではうる覚えなんで正確な言葉では無いんですが、ニュアンスはさほど変わって無いと思います。
明日香、三輪山、山野辺の道、味酒、海柘榴市、笹ゆり(幸草・三枝)そしてこの地で「額田王」が近江国に下るときに詠んだ 味酒 三輪の山・・・を知りました。そして大鳥居の向こうに見える三輪山をご神体とすること、大神神社の謂れも知りました。
面白いものですね「仕事」をするために「その地」の里の歴史、産物、文化等をシッカリ学ぶ事から始めないとデザインなんてできないんですよ、やはり難儀な男ですね!!
そしてこのブログを書くに当たって万葉の頃の生活や、恋など「額田王」についても面白い事を知りました。お借りした画は「明日香の春の額田王・安田靭彦画伯」ですが とても美しい女性ですね。文学者や画家は「美しい女性」を思い、歴史学者はそうでは無かったと云われます。
どちらの説が云々・・等と云う趣味は一切ありません。
中大兄皇子(後の天智天皇)の歌
「香具山は 畝傍を愛(お)しと 耳成と相争ひき 神代より かくにあるらし 古も しかにあれこそ うつせみも 妻を 争ふらしき」
この歌の意味は「香具山は 畝傍山がいとしくて 耳成山と戦った 古代からそうだった 昔からそうだったのだから 現代でも 妻をうばいあう」ということです。
蒲生野で詠まれた「額田王」の歌
「茜さす 紫野ゆき 標野ゆき 野守は見ずや 君が袖振る」 この歌の意味は「茜色に輝く紫野を、標野を行き来しているあなた 野守は見ていないでしょうか そんなに袖を振ってそんなに私に合図なさっているのを」
すごく好きな歌です(
いまさら)しかし、茜さす・紫野と美しい色感にくわえ、紫野ゆき・標野ゆきの言葉のリズム感が最大限に映像を盛り上げ、野守は見ずや 君が袖振る、と密やかな恋心を静かに歌う!(
イヤハヤ何とも・・古〜〜い)いいですね。
大海人皇子(後の天武天皇)
「紫草の 匂える妹(いも)を 憎くあらば 人妻ゆえに 我恋いめやも」この歌の意味は「紫に美しく輝くあなたを嫌なわけがあれば 愛してはならない人妻のあなたになぜこんなにも恋い焦がれようか」
当時の万葉人の(特に位の高いひと)の恋や結婚がどのようになっていたか、どうか!ゲスっぽく三角関係だったのかどうか、茜さすと云う言葉は 高貴な色とされた「紫」の枕ことばで色の意味はない!とか、紫は、紫草の野原でとか「標野」は薬草を摘む御領の野原とか、蒲生野に遊猟に出かけた際の宴席で座興に詠まれた歌だから「相聞歌でなく雑歌に分類」だとか、また額田王はすでに40歳位だった。この時代の万葉人は大らかな一夫多妻制であった・・・等々、もう切りが無いほど話は広がる。
しかし、本題はそんなところになく 今でもこんな映像を想像するだけで ちょっと胸が躍りませんか!!えっ、オドラない(風狸だけかなぁ〜)
そんな古のロマンに満ちた蒲生野を歩む記事が「悠ちゃんの植物大好き」其の二 で紹介されました。素晴らしい恋歌が詠まれた地の写真に「五行歌」を入れたい・・! 無理を言いお願いしました。だから、私の恋歌ではありません! もし一緒に歩いていたなら、たぶんこんな気持ちだったでしょう。
それでお題は変えました。五行歌「蒲生野を行く」
秘めた恋歌
眠る万葉の道
一草のそよぎにさえ
仄かによぎる初恋よ
黙して歩む蒲生野を
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